2008年10月12日

「下駄で歩いた巴里」林芙美子

Sub13_album_image_21

「考える人」秋号に[堀江敏幸と歩く巴里とその周辺]という特集がある。
そこには、うっとりするような本屋さんや、郊外の暮らしぶりなどもが紹介されている。
バリとは確かに魅力的な土地である。
この「下駄で歩いた巴里」は、1930~32年頃の、林芙美子さん初の海外旅行の紀行文である。
今から70年前、不穏な時代の29才の女性の一人旅…。じつに無鉄砲な一人旅だ。
林芙美子は、巴里郊外のモンモランシィやバルビゾンへも一泊旅行に出かけるが、
おそらく彼女が泊まったプチホテルは、今も現存しているだろう、
 と、思わせるのが、フランスという国である。
エッセイが生きいきしているのは、土地への愛情が見え隠れしていて、その裏には時代を刻印しているからだ。

ところで先日、向島へ中里和人さんの写真展へ出かけた。
ドイツで行われた展覧会の里帰りである。
展覧会場の写真にはこの町への愛情がたっぷり血脈のように流れていた。
私にとって初めての向島は、迷子になりたいような場所だった。


 
   

      

      

      

   

   

      

      

Back to top