2012年1月11日
「掏摸 (スリ)」・「王国」 中村文則
二年前に読んだ「掏摸 (スリ)」は大江健三郎賞をとったんですね。ぴったりかも。、
「王国」は、2010 9月刊。「掏摸 (スリ)」の兄妹版的な小説。
去年買っておいて、おととい、やっと読みました。二冊ともテーマは「悪」。
悪ってどんなこと、と思う間もなく、圧倒的な筆力でどんどん入り込んでしまいます。
緊迫感は桐野夏生の一連のピカレスクロマンのようですが、
短い分、濃厚です。
言葉にこだわり、人間の生きるこの世界の状況が
ひしひしと迫ってくる臨場感。小説しかできない表現があると改めて感じます。
でも、ほんとは言葉でも伝えられない、よくわからない怖い怖い世界。
中村氏は昨年、読売新聞にドストエフスキーの「罪と罰」についてエッセイを連載されていて、それも面白かったです。
「掏摸 (スリ)」は、アジア、フランス、アメリカ、カナダで翻訳されるそうです。
犯罪小説という分野にこだわらず、ただ「小説」として楽しめる一冊です。
それから、鈴木成一ファンとして、やっぱり小説の装丁、うまいなぁと。
どうして、「白」色なのに、こんなにタイトルが印象的なの!
何気なのにいつも的確。内容を理解する力がすごいな、と、つくづく感じた装丁です。