2009年5月14日

深沢七郎「庶民烈伝」

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人ごみの多い盛り場に行くと、これまで会ったこともないような、理解不能な人たちに出っくわす可能性が高いから気をつけなさい、と、精神医学の講義で教授が注意してくれた。
しょせん、人の想像力は身の丈サイズである。そして、小説は、身の丈をやや引き延ばしてくれる (こともある) 。
深沢七郎の「庶民烈伝」は、文字通り烈しい人たちを、活写している短編集です。
昭和の作品だし、ここに登場するような、二階の間借り人とか、アルサロ(わかんないよね)の戦うホステスさんたちとか、更に過去にさかのぼって難儀な環境もなんのそのと生きぬかれている気丈な方たちには、お会いすることはないだろう、と、ホッとしたら大間違い。
彼らは、現代もすがた形を変えて生きているはずだ。 (前回のトルストイ作品と同様に、それが文学のテーゼのひとつでもあろう)。
つまり、彼らとは、盛り場、アキバ、新宿等で、うじゃうじゃすれ違っているのだろう。
「烈伝」に比べれば、オリラジ「武勇伝」 (古っ) なんて幼稚園のお遊戯みたいだし、カフカの短編なんてメルヘンに過ぎない。

こうした凄みのある方たちを描く、深沢七郎という作家も烈しい人だったのだろう。
ギタリストであり、曳船で鯛焼き屋さんをしたり、ラブミー牧場を運営したり、いろいろいろいろ。彼を「変人」と呼ぶ人もいる。

ともかく、インフルエンザ予防も兼ねて、盛り場には出なくとも生活はなんとかなる。
が、ネット上で出会ってしまう可能性は超高い。

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