2009年5月11日

トルストイ「幼年時代」「少年時代」「青年時代」

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先日斎藤美奈子さんの文庫「趣味は読書。」を読んでいたら、頼まれもしないのに自分の気に入った本を人に教えている人がいる、というような文章に出会いました。
え、もしかして私かい? とふと立ち止まってしまいましたが、私は古本屋さんでもあるので、本の味方、宣伝もしなきゃならないんだよね、と思ったりしました。
確かに本は好きだけど、私は本を「読む」のがもっと好きです。
だからといって、決して活字中毒ではありません。この辺はまたそのうちに。

さて、読みたい本が無くて困ったなぁというとき、つい、古典を手に取ったりしませんか?
この3冊も古典。ロシアの文豪トルストイ(1828~1910)の自叙伝的処女作だそうです。
私はどちらかというと、トルストイよりドストエフスキーやチェーホフに馴染みがあり、
恥ずかしいことに「アンナ・カレーニナ」も未読でして、知らない伯父さんの本を読んだ感じでしたが、とても読みやすかったです。
それは、ひとえに、「名訳」!からなんだろうと思います。
大昔の行ったこともない外国の貴族の御曹司の思い出話という、まったく関係ないね、の世界にもかかわらず、私自身、読者自身の幼年時代の記憶をも、主人公の記憶とともに、まざまざと蘇らせてくれるのでした。

東大英文学科を中退後、徴兵拒否され「農耕が一番罪が無い」と、熊本で農業を営まれていたトルストイに魅せられた文学者、北御門二郎さん(1913~2004)が訳されています。
少年時代、青年時代と、一人の人間が様々なかかわりの中で知性や感性を成熟させていく過程は、文豪と名訳者により、その普遍の体系を知らしめてくれるのです。
山本容子さんの洒落た装画、名匠鈴木成一さんの装丁です。

高木さんの講談社での最後の単行本。いい仕事してますねぇ。

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