「世界が終わるわけではなく」 ケイト・アトキンソン
「世界が終わるわけではなく」
ケイト・アトキンソン
訳: 青木純子 2012 東京創元社
ケイト・アトキンソンの短編集「世界が終わるわけではなく」(東京創元社刊)は、
目まぐるしく変わる日々を生きる人たちの物語。テーマは変貌でもある。
邦題(原題は「Not the End of World」)は、訳者の青木純子さんが述べているように、
「そもそも我々が現実とみなしといるこの世界だけが、唯一無二の現実なのだろうか?」という疑問と、
ここの世界が終わり消失してもさらに別の世界への扉は開かれているかも?
という二重の意味を含ませているそうだ。
冒頭の「シャーリーンとトゥルーディのお買いもの」と最後の作品「プレジャーランド」は呼応しているし、
ある作品に登場した人物が別の作品に出てきたり、全体的にぐるぐるっと回り続ける回転木馬に乗っているような勢いに満ちている。決して終わらない物語のようだ。
だから、窓の外の雨音をBGMに、静かな室内でゆっくり読もうとしても、
テレビのバラエティショーに入ってしまったようで、読んでいて疲れてしまうのだ。
私にとってのその要因のひとつは、情報の多さにあるのだろう。
それぞれの作品に古典文学などから引かれた意味ありげな文章を掲げているのも、
なんかうっとうしい。シンプルにはできないものかな、と言いたくなる。
文中、他人には知りえない内面の言葉が太文字で記されていたり、
世界に名だたるブランド名がたくさん唱えられたり…。再生=リプレイを繰り返す作品が多いし。
読んでいるうちに、なんとなく居心地が悪くなったりするのだ。
でもそれは、この「世界が終わるわけではなく」が、まぎれもなく〈現在の物語〉だからだろう。私たち周辺の、拡大描写。現実でもあるのだ-!!
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