2010年7月14日

長谷川燐二郎画文集 「静かな奇譚」

年上の友人から本をいただいた。読書から遠ざかっていた私には、ちょうどいい画文集である。「長谷川燐二郎画文集 静かな奇譚」(求龍堂)。(リン「燐」はサンズイなのだが変換不可ですいません) 話題をnews「ホットケーキ」⑧回の、「パリ」に繋げると、この画家もその地に滞在した。予定では5年以上の長期のはずが、僅か一年間で帰ってきたそうだ。帰国して描いた風景画「荻窪風景」は、パリで描いた作品と雰囲気もタッチも変わらない。1930年代の洋行で、カルチャーショックを受けなかった人は珍しいのではないだろうか。 でも考えてみれば当然だ。だって画家が呼吸している空気はどこでも同じだ。その空気…見えないエナジーみたいなものを各地で呼吸しながら描いた風景画なのだから。そして、風景画をじっと見ていると、そこには描かれていないどこかへと連れていかれそうになってしまう。画家は眼前の風景の裏側の、不可思議な空間の域へと、いつも踏み込んで行ったのだろう。パリでも荻窪でも、京都を描いても。 以前に「一冊」で紹介した「シベリア物語」の長谷川四郎は末の弟さん、谷譲次を長男とする著名な函館四兄弟の二番目が隣二郎さんであるが、中学時代は水谷準、久生十蘭と交わったというのだから根っからモダン、エリートなのだけれど、どこにも属さず、じっくりと画業を貫いた。 谷内六郎を思い出させる風景画もいいが、私は静物画も好き。描かるているモチーフも大好き。それらが置かれた間隔も。静物画を見飽きないのは、今、在宅時間が長いからかもしれない。 …とにかく本を贈られるなんて珍しいことである。おまけに今の気持ちにしっくりとする選択が、本当に嬉しく有り難かったです。道立函館美術館での回顧展あたりに出かけられたらもっといいです。 ちなみにこの求龍堂の《画文集》シリーズの「高島野十郎」は自分で買いました。こちらも一読一見の価値あります。

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