2010年1月18日

「健康への道」 文藝春秋SPECIAL

健康

E・M・フォースターに「インドへの道」という面白い長編小説がありました(映画化もされていますね)。橋本治さんにこれまた「貞女への道」(あ、今「貞女」は変換されなかった。死語?) という面白いエッセイの著作がありました。だからこれを買ったのです。というのはウソです。が、「道」なんてちょっと微妙でしょ。それから、全編エッセイ集だから買いました。

執筆者は平均して前期高齢者世代でしょうか。どうしてもっと若い人が寄稿していないのだろうか。鎌田慧さんと対談してる香山リカさんだって50代でしょうし。

私は若い時ほど健康について考えていたし、走ったり泳いだり体操したりしていました。人は年老いていけばだいたいは病気に、不健康になるもので、若いうちはせめて健康でいたいと思っていましたから。健康でないとお嫁にもいけないしとか、思っていたわけです。

執筆者はきっと読者層に合わせているんですね。高校生は文芸春秋なんか読まないよね。芥川賞受賞作品一挙掲載号以外は。そして、おそらく執筆者の方たちは、あんまり「健康」への道なんてことは考えたことはないのではないだろうか。前向きだし体力がありそうです。健常者ばかりですしね。

東海林さんと赤瀬川さんの対談は愉快でした。対談のテープ起こし原稿にいっぱい手をいれたのかどうかは知りませんが、つっこみとぼけという?役割分担をしているのか、本当にすごい老人たちだ。赤瀬川さんではないが、私も自分に、毎日発見したいものです。いまだかつて知らなかった老いを。

桐野夏生が、高校時代、ある日教師が「君たちは死に向かって行進しているのだ」みたいなことを言ったとき、教室中がシンとしたというようなことを書いていました。私も大学で精神医学の講義中に、精神科医でもある教授が、「はっきりしていることは百年後には、ここにいる人たちは誰ひとりいないということだよ」、と言ったとき、「あ!」と思ったものです。

話はそれてしまいましたが、この雑誌は、テーマが健康と老いとがごっちゃになっていて混沌としていますが、雑誌だから、“これでいいのだ”。「ユリイカ」とか「現代思想」じゃないからね。とにかく人数そろえましたよ、という感じで盛り沢山で楽しいエッセイのアンソロジーでした。

健康でなくていい。贅沢は言いません。不健康でも、死ぬまで生きるのです。

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