2011年4月10日
「猫の散歩道」 保坂和志
保坂さんの小説は「猫に時間の流れる」などもちろん好きですが、印象が強いのは「季節の記憶」です。
そして、この「猫の散歩道」も、季節の記憶がいっぱいです。
亡くなられたお父様が、保坂さんの連載エッセイ「プロムナード」を読むために、毎日鎌倉駅まで自転車で日経新聞を買いに行かれたというエピソードが「あとがき」にあります。
それもまたたいせつな季節の記憶です。
最近、読書がどうも面倒になってしまったな、というやっかいな人もこれなら大丈夫、安心です。
装丁も、村上廉成さんの絵もグッド。
かつて保坂さんのエッセイ「途方に暮れて、人生論」にとても助けられたことがありました。きっと途方に暮れていたのですね。
今回の「猫の散歩道」にも、若い人に読んでもらいたい文章がありました。それは82ページ。
最後の少しだけ引用しておきます。
「すべての芸術は果てがない。芸術は決して霞や幻でなく、現実を最終的な地点で支えている。反面、お金こそが人生と無縁のところで動いているように見える。」
これは納得の言葉でした。
☆ NEWS (2011 3/16) の記事もご参照ください。