2011年3月1日

荒川健一作品集 「 腥態 SEITAI 」

腥態SEITAI 
 

・・・荒川健一さんが、過去15年間、撮影されてきた膨大なモノクロ写真の中から、長い時間をかけて選んだ100作品を収録したのが、「腥態(SEITAI)」です。荒川さんの初の“作品集”で、いわば荒川写真15年の集大成ともいえます。

 

 15年前、皆さんはどんな毎日を過ごしていましたか? バブル期も終焉を迎え、日本に冬の季節が到来していました。私は親の介護をしながら、今とは異なった方向を見て歩いていました。区内のある施設にボランティアに行き、後楽園の野球場でソフトボールをしたりしていました。懐かしいです。

 想い出は懐かしいですが、その後の携帯電話の波及、IT技術の進化で、時がぶっ飛んでいるかのような現在からみると、今此処とはずいぶん遠く感じます。世界情勢は想像を絶する変化を続け、環境の悪化も著しいです。人が必要とする生きるための自分の物語さえ、剥奪されていくかのような、不透明な実態もみせています。

  その15年、荒川さんはずっと撮り続けていました。そして、そんな世界の表裏からも逃れている、社会では決してとりあげられない側面に在る、いきもの、たてもの、くうきを、荒川氏はずっと「レンズ越しに見続け」(萩原朔美氏の解説より)てきました。

  山海、神仙境、そして廃墟に棲む鳥獣虫魚、時間が停止しているような風景と肢体のありさま…。

 「腥態SEITAI」の写真からは、今の此処と過去をつなげている、微かな呼吸音のような幻惑が漂っています。いまだひたひたと生きているなにかが、そこには確かに映っています。

 

 3月12日土曜日から、当ギャラリーで、刊行を記念して、荒川健一写真展「腥態 SEITAI 」を開催します。

 この機会にぜひ、多くの方にそんな荒川さんの写真の魅力に触れていただきたいと願っています。

 

 ★写真展では、荒川健一作品集「腥態 SEITAI」現代書館刊 定価3,500円(税別)も販売します。

100枚の写真を、標本箱のように一冊に封じこめた中山銀士氏の造本術と、萩原朔美氏のインテリジェンスな水晶玉のようなエッセイが寄せられた、三位一体の楽しみを得られる、豪華な写真集となっています。

 

 

Back to top