2009年10月30日

ゆらゆらゆらぐ、鑑賞の時間と快感

1 手前から二点、森本太郎さんの作品です。
この画像では、はっきり見えませんが、作品の表面に凹凸があります。キャンバス地にアクリルで描かれているこのイエローのカタチ、タイトルは「ミラノの花 #8」。森本さんの作品の素となっているのは、印刷物からの切り抜きなどです。拡大、縮小などの加工を重ねていき完成させるフォルムなのです。でも、ミラノの花、密かに息づいています。アクリルの額の中で、ややあたたかく、ゆらゆらと咲いています。素材となる写真などの切り抜きはたくさん集めているのですか? とお聞きしたら、たいがいは迷うことなく一発OKで選んでしまうので、収集はないそうです。膨大な情報の中から、直感によって選ばれた、たった一枚の切れ端が、やがてこうした作品となって定着していくのです。現在の景色として生きはじめるのです。
先月、ヒコーキで一時間、岡山から二時間くらいかけて観に行った、奈義町美術館での「森本太郎展」。厳しい陽光を避けて入った館内、広い部屋のソファーにひとりで座っていると、ただ静かな時間がすーっと流れていくだけ・・・。ひそやかなひとときを経験してきました。それはまるで「鑑賞の快感」みたいな経験でした。この「ミラノの花」は、メディアの洪水から救いあげた一輪の花のように思えます。
今回のグループ展での展示は2作品ですが、来年5月下旬、本六での個展で、どのような空間が出来上がるのか、今から楽しみです。
なお、右の作品は刺繍作品です。出身地倉敷の織物職人さんとのコラボです。森本さんの作品は、絵画と工芸との淡いに存在するかのようです。

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