霧ヶ峰涼に逢える幸せ・・東川篤哉「放課後はミステリーとともに」 [モーニンとイブニン©]
モーニン* 今日の満月、すごくきれいでした。・・・川を渡るときにいつも見上げるんだけど、今日の月は格別だった。群雲が月の前を、幾重にも流れてその光を遮るたびに、出たり消えたりで。
イブニン* モーニンったら、清少納言みたいなこと言いますね。でもね、実はボクも見ていたんだ。
M* きっと、いろんなところでこの月を見ているんだろうなって、思った。
E* そうですね。・・・そういえば、うさぎの店長はあれから部屋にこもったきりですね。あの人は見てないでしょう、きっと。
M* なのに、いやにコンスタントなブログの更新はなぜ? 部屋から、書きなぐった紙を放り出してくるのはやめてほしいね。
E* しかたないよ、パソコンも携帯も持ってないんから。たぶん、店長は、書くことで落ち込みを抑えているのでは? 書くことは考えることだからね。そして書くことは希望につながっていく。
M* でも、もうそろそろ出てきてもらわないと。忙しいですよ。写真展は明日で終了ですし。
E* この十日間はいろいろ大変。だれもが心の底に溜まってしまって動かないものがあるはず。まん丸い月は、そうした疲れをも映しているようでした。
M* とにかくね、店長にはどうにかして、もう部屋から出てきてもらいましょうよ。
E* ボクに名案が浮かんだ。店長が出てくるためには・・・。
M* 松山ケンイチ!。
E* じゃないって! じつはここに、店長が思わず脱兎のごとく・・。
M* なにしろウサギだし。
E* ふん。ちゃんと聞いてよ。これさ、見て!
M* おおっ、てか、それは東川篤哉のミステリーっ。じゃないかっ。
E* そう、それだけじゃない。 パッ
M* うわっ。そ、それは。
E* サインを、うひひ、いただいたのですよー。
M* いつの間にっ?
E* じつはサイン会にGOして、走って走って、ぎりぎり間に合ったのです。バンザイ。
M* なんちゅー、仕事をさぼり、しかもあたしにも内緒ででかけたのですね。
E* ふふふ。ボクはもうすっかり、霧ヶ峰涼の大ファンになりましたよ。
どんなつらいときも、霧ヶ峰涼に逢えるなら、つらいことも耐えられる。
ボクはね、思うんです。2009/9に「1冊の本」の方でも書いたけど、東川先生の品の良さは、品格は昨今のエンタメではピカイチではないかと。その上、未体験読者へのミステリーの入門本にもなります。「幻影城」なら、どう評するでしょうか。
初期の赤川次郎さんのようなサービス精神、ユーモア、仕掛け、もう泣けてきますね。イマドキ漫画にも勝てちゃう面白ミステリーなんだ。ボクが好きなところはね、実のところ、お笑いとか脱力系とかじゃないんです。全国の子供から高齢者の方へお奨めできるのですよ。すべての人の《放課後》に、東川篤哉を !
M* そうですね。まったく異論なし。そうですとも。しかしね、自分だけで行くのはゆるせねェ。
E* イテテ、離してください。虐待だっ。
M* プンプン。ぽいっ。
E* ふぅ~。
とにかくね。毎夜、月を眺め、その姿の変容に我が心を映し、自らを省みて学び、それでも眠れないときは東川篤哉先生のミステリーを読んで、面白さにますます眠れなくなるけれど、しかし、主人公霧ヶ峰涼の好奇心、勇気、チャレンジ精神、その初々しさを見習って明日に備えるのですよ。今は。
M* その通りです。さてさて、店長~、もう出てきてくださいよ~。イブニンが興奮して語っています。東川先生のサイン本があるのです。穴にこもっている場合ではありません。
E* もう一言語れば、憧れの東川先生は、想像した通り、小説と同じくやっぱり品のある方でした。推理作家とはこういう方なんだと。静かな雰囲気の理知的な方でした。
サインをいただき、本当にうれしかったです。ありがとうございましたっ。
M* あっあらら、店長が脱兎のごとく飛び出てきました。・・・あっ、無謀にもサイン本を奪って、また巣穴へ。
待てーっ!!!