特集企画 

⦅本の思い出⦆ 阪上万里英 / 赤枝真一 -

 

[特集企画展開催アーティストさんに訊いた「本の思い出」      

ウインドウ001

坂上万里英展 「彼らの覚えている夢」

 

 

・ 印象に残っている3冊の本。その理由も教えて下さい。
& 好きなアーティストも。

 

阪上万里英展「彼らの覚えている夢」

◆阪上万里英  SAKAGAMI MARIEさん

1 「ぼくは覚えている」 J・プレイナード小林久美子訳(白水社) 展示タイトル「彼らの・・・」はこの本からのイメージで決めました。

2 「十二の遍歴の物語」G・ガルシア=マルケス旦敬介訳(新潮社) この本に収録されている「光は水のよう」は、卒業制作を作るきっかけとなり、 題名にもなった大切な作品です。

3 「Art Forms in Nature」エルンスト・ヘッケル(日本語版は河出書房新社) 古本屋で見つけた洋書。生物の図版本。煮詰まった時はこの本を見ます。

・好きな芸術家・・・アレキサンダー・カルダー 昨年はよく彼の作品集を見ました。
大きくて動く作品を作るのは難しいですが、 そこに出来る空間は楽しく魅力的だと思います。

 

赤枝

赤枝真一展 「Magical Mystery Market」

 

 

赤枝真一展 「Magical Mystery Market」

赤枝真一 AKAEDA SHINICHIさん

 

1 「敦煌」 井上靖 (徳間書店) 物語だけでなく、口絵写真や表紙も含めて大好きな「本」だった。

2 「草祭」 恒川光太郎・・・新潮文庫(新潮社) 病気療養中にこの作者と作品に出会い、人生が少し変わったと思う

3 「本格小説」 水村美苗・・・新潮文庫(新潮社) 一生のうちに一つでも、このように深く心に刺さる作品を残したい。

・好きな芸術家・・・ペトルス・クリストゥス 初期フランドル絵画が好きで、
その中でもこの人の絵は欲しいと思う。 ちょっと変だったり親しみやすかったり。癖になります。

 

 

⦅書評⦆ 三浦綾子と「銃口」 林田衿子 -

 

 今年は、三浦綾子さんの朝日新聞一千万円懸賞小説「氷点」が新聞連載されてから、ちょうど50年目にあたります。何度もドラマ化されたこの小説のことは、ご存じの方も多いことでしょう。綾子さんは1999年に亡くなりました。その6年前にパーキンソン病の身を押して書き上げた最後の作品が、長編小説「銃口」(小学館文庫上・下)です。

主人公の北森竜太は、熱心な小学校教師でしたが、たった一度、綴り方連盟の集会に出席したことによって、昭和16年、治安維持法違反の容疑で連行され、7か月間拘留された末、無理やり退職願を書かされたのです。これは、北海道綴方教育連盟事件と呼ばれ、戦後ようやく明るみに出た実際の事件です。

宿直当番で夜道を学校へ向かう竜太が、普段、挨拶を交わしている交番の巡査に呼び止められ、有無を言わさず連行される場面は、あまりにも恐ろしく、身につまされました。それは昨年、強行採決された秘密保護法や憲法解釈変更などで、昔に逆戻りする危険性が現実問題として危惧されてしまうからです。

熱心な教師であったが故に、時勢に従順すぎた竜太の姿は、戦中、小学校教師であった作家自身の姿が投影されたものでしょう。綾子さんは軍国教育をしたことを悔いて、戦後すぐに教職を去り、後には社会から目をそらさない作家活動を続け、作品の中で原発問題にも早くから言及していました。重いテーマの作品ではありますが、竜太を取り巻く人々の温かさ、誠実さに昔の日本人の良さを感じ、ほっとさせられる場面もたくさんあります。

今だからこそ読んでいただきたい一冊です。            (はやしだえりこ  三浦綾子読書会会員)

本の思い出  上畑ナオミ・ミズタニカエコ -

 

 

 

 

[特集] 展覧会開催アーティストさんに訊いた「本の思い出」  2nin_postcard_1  

 

・ 印象に残っている3冊の本。その理由も教えて下さい。

 

上畑ナオミ×ミズタニカエコ 二人展 「網膜のプレパラート」

 

上畑ナオミKAMIHATA NAOMIさん

1 『神話の力』 ジョーゼフ・キャンベル(ハヤカワNF文庫)。

人は生と死と再生を繰り返していることを自覚できる本。中間に意味がある。

 

2『広場の孤独・漢奸』 堀田善衛。(集英社文庫)

戦争にコミットするか否か、その間を苦悩しながら模索するコミットしない姿勢。

 

3『指輪物語』 J.R.R.トールキン(評論社文庫)

ネット社会において「目蓋なき燃える目」は欲望の象徴。ゴクリとフロドが愛しい。

 

 

ミズタニカエコ MIZUTANI KAEKOさん

1 『理科工作ずかん』 實野恒久 (保育社)

物創りの原点をこの本で学んだ。自分の人生で欠かせない一冊であり、一番読み返している本でもある。

 

2 『夏の花・心願の国』 原民喜(新潮文庫)

儚く切なくも、美しく力強い作家の、毅然とした姿勢と情熱が滲み出た作品。一番強く、心打たれた作品。

 

3 『幻想の画廊から』  澁澤龍彦 (青土社)

澁澤文学の、美術に対する美学が集約された一冊。嗜好を決定づけられた。

 

 

Back to top