鶯に励まされる。   [ ホットケーキが焼けるまで 33 ]

2011年5月20日

 

久々の[ホットケーキ]ですが・・・。

 

日曜日の夜、NHK教育テレビで、「ネットワークでつくる放射性汚染地図」という特集番組を見ました。

原発の報道は毎日、テレビやネットでチェックしていますが、そういうデータ的なものは、この番組によって、どこかにすこっと、消えてしまいました。

とてもきれいな風景、でも汚染されている。悲しく理不尽なことばかりです。気持ちが沈み、そのあとは何を見ても涙が出てきてしまうような、まさに[水棺}されそうでした。

 

数日後の朝、どこかから「ピョ~」という、妙なまっすぐな音が聴こえて目が覚めました。

その声はいろいろに変化して、やがて、「ほーほけきょ」と整い(?)、鶯の独唱として完成しました。

まだ、若手の鶯なのでしょうか。

それとも、クラシックな鳴き声として完成するまでには、いくつかの工程を踏まないとだめなのでしょうか。

人々が起きだす前に、庭の木に止まって、独習朝練していたのでしょう。

そうして、そろそろと、周囲も賑やかになり、晴れた一日がやってきたのでした。

そうでした!  毎年、春は、鶯か競って、合唱していたのです。

 

本郷通りは夜になると、このころひどく暗いです。節電のためです。

ちょっと物騒な気もしたりしますが、この薄暗さは新鮮な気もします。

全く変わらないのは、並木の木々のにおいです。東大からも漂ってくるのだと思います。

雨の日の翌日は、特に強く感じます。

むせ返るような、いい匂い。新緑の匂いは格別です。

きっとこの匂い、伊豆も安曇野も、八ヶ岳も小海も、日本中、同じなのでしょう。

車が多いうるさい通りですが、こんなところでも緑に恵まれているのだな、と気づきます。

 

震災以来、テレビをよく見るようになりましたが、なんとなく与えられている感じが、嫌です。(ネットの方がそんな印象は薄いのかもしれません。)でも、「情報」がないと不安な感じになってしまうのは、今の時代、しかたがない。

 

それでも、鶯の鳴き声を聴いたり、樹木の香りを嗅いだり、

それから都心を歩く夕暮れに吹く風を感じたり、

そんなことを、自分で気づくことによって、ちょっと救われるように思います。

つまり、自分の感覚を、意識してナチュラルに保っておく、というようなこと、です。

作られ与えられた外部からの情報ではなく、内部の感覚とでもいうのかな。

そんなことに気づかせてくれた、鶯に感謝したいです。

 

今夜、テレビのニュースを見ていたら、陸前高田の風景にも、鶯の鳴き声が聴こえていました。

つながっているのですね。 

 

 

「ネットワークでつくる・・・」で映った土地、美しい土地にも、きっとむせ返るような新緑の匂いがしているのでしょう。

でも、それを嗅ぐ人たちや生き物はいなくなります。その空を飛ぶ鳥たち、鶯は大丈夫なのでしょうか。

 

とにかく、「ネットワークでつくる・・・」は、決して忘れられない、忘れてはいけないドキュメンタリーでした。

 

 

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