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先日、布川愛子さんの個展に行ってきました。
動物たちのイラスト、愛らしくて気品ある彼ら、リスや足長の鳥やキツネさんたちにほっとし、にんまり、あったまってきました。
彼らの気持ちみたいなものと一緒になれる、この感じがとても好きです。
もちろん、とびきりおしゃれなところも。一枚だけでも十分楽しい。
展示作品の中に「PINE TREES」というタイトルの、松の木を背景にしてみんなが寝転んで本を読んだり、お話している作品がありました。ノートなどにもなっていました。
みなさんもきっと、外で、公園などでゴロゴロするのが好きですよね。
私の場合は水辺が多いですが、松の木は海辺にも防風林として立っています。南伊豆にもありました。
そういえば、友人の家のお庭にも一本立っていました。もともとおじい様のお庭、他は現代手金のですが、松の木だけはそのまま残してあるのです。一本の松の木、堂々としていて魅力的なのです。
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この絵を見ていて思い出したファンタジーがありました。ポール・ギャリコのファンタジー「ほんものの魔法使」(訳:矢川澄子)です。
ギャリコには動物たちが主人公のお話も多いです。猫が主人公の「さすらいのジェニイ」。そして「雪のひとひら」、「トマシーナ」。カンガルーの「マチルダ」、「トンデモネズミ大作戦」など。そのほか「ポセイドンアドベンチャー」など映画化された作品も多いです。
ギャリコの小説には、ユーモアとペーソス、それから胸いっぱいの愛を感じられます。
さて、「ほんものの魔法使」には、正体不明の魔術師らしいアダムという若者、連れの人語がしゃべれる犬モプシー、魔術師一家の娘さんジェニィが登場します。
「魔術師」が集う秘密都市「マジェイア」に辿り着いたアダムとモプシーは、「魔術師名匠組合」に加わるための審査を受けることになり、ジェインが彼らの助手に選ばれます。
マジェイアでの魔術とまるで異なるアダムの「魔法」の種明かしがわからないと、ジェインはとても不安です。そんなジェニイに、ピクニックに行った農場で、アダムは眼前に広がる風景を示しながらこう言います。
「われわれのまわりには魔法がみちみちてる」
「そのうちのどれひとつとして説明がつきやしない。」
ちいさなどんぐりが、やがて大きな樫の木になっていくのはどうしてだろうか。
それは謎だ。そもそものはじまりはいったいいつのこと? そして、どうやってはじまったんだろう?。
農場で暮らしている動物たち、仔馬も牛も豚も。池の水の一滴にも、肉眼で見えない何百万の小さな生き物が、「僕らとともにこの世界で生きている」。
小さな緑色の毛虫が蝶々になり、茶色のヤゴが蜻蛉になるのはどうして?
農場で生きるものすべて「地の魔法、水の魔法、火の魔法、風の魔法だ」。そして、夜には夜の魔法が存在し、「望遠鏡が大きくなればなるほど、その神秘は増すばかり」。
さらにアダムの問いかけは続いていくのですが、知りたい方は{LIBRAIRIE}のコンテンツ「本六の本棚の本日の1冊」ブログでお読みください。
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『住む <ふるさと>の環境学 』(谷川俊太郎責任編集・(平凡社カルチャーtoday③1979刊)という本を読んでいたら、寺山修司が出題した、東京に関するアンケート(10問)についての谷川さんの答えにつぎのようなものがありました。(「現代詩手帖」1974/9月号)
⑦ある朝、窓の外の風景が一変しているとしたら、「どんな風景」をのぞみますか?
☆隣家の二階の窓の前に、大きな樹がしげってるといいな。
樫の木も松の木も、長い年月を経て大きな木に育っていきます。
そんな彼らのおかげで、ピクニックに来た動物さんたち、アダムもジェニイも私たちも、和めるのでしょう。
大きな樹が一本、素敵な魔法です。隣に一緒にいられるだけで幸せです。
買ってきました~。©ai 布川さんのオリジナルグッズ。
右が「PINE TREES」のイラストが
表紙(表裏)になっているノートです。