松の木 樫の木 隣の木  …布川愛子さんの個展へ [ホットケーキ 76]

2013年2月7日

 

 

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先日、布川愛子さんの個展に行ってきました。 

動物たちのイラスト、愛らしくて気品ある彼ら、リスや足長の鳥やキツネさんたちにほっとし、にんまり、あったまってきました。 

 彼らの気持ちみたいなものと一緒になれる、この感じがとても好きです。 

 もちろん、とびきりおしゃれなところも。一枚だけでも十分楽しい。 

 

展示作品の中に「PINE  TREES」というタイトルの、松の木を背景にしてみんなが寝転んで本を読んだり、お話している作品がありました。ノートなどにもなっていました。 

みなさんもきっと、外で、公園などでゴロゴロするのが好きですよね。

私の場合は水辺が多いですが、松の木は海辺にも防風林として立っています。南伊豆にもありました。

そういえば、友人の家のお庭にも一本立っていました。もともとおじい様のお庭、他は現代手金のですが、松の木だけはそのまま残してあるのです。一本の松の木、堂々としていて魅力的なのです。

 

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この絵を見ていて思い出したファンタジーがありました。ポール・ギャリコのファンタジー「ほんものの魔法使」(:矢川澄子)です。 

ギャリコには動物たちが主人公のお話も多いです。猫が主人公の「さすらいのジェニイ」。そして「雪のひとひら」、「トマシーナ」。カンガルーの「マチルダ」、「トンデモネズミ大作戦」など。そのほか「ポセイドンアドベンチャー」など映画化された作品も多いです。

ギャリコの小説には、ユーモアとペーソス、それから胸いっぱいの愛を感じられます。

 

 

さて、「ほんものの魔法使」には、正体不明の魔術師らしいアダムという若者、連れの人語がしゃべれる犬モプシー、魔術師一家の娘さんジェニィが登場します。

「魔術師」が集う秘密都市「マジェイア」に辿り着いたアダムとモプシーは、「魔術師名匠組合」に加わるための審査を受けることになり、ジェインが彼らの助手に選ばれます。

マジェイアでの魔術とまるで異なるアダムの「魔法」の種明かしがわからないと、ジェインはとても不安です。そんなジェニイに、ピクニックに行った農場で、アダムは眼前に広がる風景を示しながらこう言います。

 

「われわれのまわりには魔法がみちみちてる」

「そのうちのどれひとつとして説明がつきやしない。」

 

ちいさなどんぐりが、やがて大きな樫の木になっていくのはどうしてだろうか。

それは謎だ。そもそものはじまりはいったいいつのこと? そして、どうやってはじまったんだろう?

農場で暮らしている動物たち、仔馬も牛も豚も。池の水の一滴にも、肉眼で見えない何百万の小さな生き物が、「僕らとともにこの世界で生きている」。

小さな緑色の毛虫が蝶々になり、茶色のヤゴが蜻蛉になるのはどうして? 

農場で生きるものすべて「地の魔法、水の魔法、火の魔法、風の魔法だ」。そして、夜には夜の魔法が存在し、「望遠鏡が大きくなればなるほど、その神秘は増すばかり」。

 

さらにアダムの問いかけは続いていくのですが、知りたい方は{LIBRAIRIE}のコンテンツ「本六の本棚の本日の1冊」ブログでお読みください。

 

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『住む  <ふるさと>の環境学 』(谷川俊太郎責任編集・(平凡社カルチャーtoday1979)という本を読んでいたら、寺山修司が出題した、東京に関するアンケート(10)についての谷川さんの答えにつぎのようなものがありました。(「現代詩手帖」1974/9月号)

 

⑦ある朝、窓の外の風景が一変しているとしたら、「どんな風景」をのぞみますか?

☆隣家の二階の窓の前に、大きな樹がしげってるといいな。

 

樫の木も松の木も、長い年月を経て大きな木に育っていきます。

そんな彼らのおかげで、ピクニックに来た動物さんたち、アダムもジェニイも私たちも、和めるのでしょう。

 

大きな樹が一本、素敵な魔法です。隣に一緒にいられるだけで幸せです。

 

 

  布川001

 

 

 

 

買ってきました~。©ai 布川さんのオリジナルグッズ

右が「PINE TREES」のイラストが

表紙(表裏)になっているノートです。

 

 

 

 

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