絵を見るということはものすごく大変なエネルギーが要ることだと、
以前、赤瀬川原平さんがおっしゃっていました。
展覧会を見に行くと、時々その言葉を思い出します。
なんらかの理由で選ばれ、展示される作品は、
それぞれの作家のとびきりのエネルギーがこめられているわけだから、
それをうけとめる側にも、ものすごい力が必要。
また、それに関してなにかコメントを表すとしたら、また違う力も必要です。
そんな力と力の勝負の場が公募展。
そして、土俵際のふんばり、そのふんばりが垣間見えたりすると、公募展はより楽しいものになります。
本六の企画展や常設展でもおなじみの近藤オリガさんが、
第1回 「損保ジャパン美術賞」展 2013 で、
みごと「グランプリ」に次ぐ「優秀賞」(3名受賞)を
受賞されたので、拝見してきました。
タイトルは「思いに耽る少年」。
今回も、オリガさん独特の、
モチーフの背後におかれている空気感が素晴らしく、
少年の表情と、その後ろの「最後の晩餐」を思わせる泰西名画的断片が、
ふしぎでみごとな調和を見せています。
オリガさんの絵を見る時、<あれ、なんだろうか?> という思いが、一番先にやってきます。
そして、なんとか言葉で表そうとしても、とうてい表すことができない風景を、オリガさんは描き続けています。
あんまりなじみがないように感じるのは、キリスト教的世界観がもたらすものだからなのかもしれません。
が、そういうことはともかく、近藤オリガさんの技と思想、オリジナリティがすごいのでしょう。
いかほど汲んでも尽きない水脈が、古今東西、自由に交差して貫かれているに間違いありません。
悩ましく美しく、ミステリアスな空気感が、観ている者に、なにものかを放射し続けています。
損保ジャパン美術賞は<公募コンクール>。
選出された作品は、
性別・年齢などにとらわれず同等に審査です。
今回の美術展の図録の見開きページに、
まったく異なる魅力の作品が、
並んで掲載されていています。
そんな自由さも、公募コンクールの魅力にあります。
(右の作品は、やはり優秀賞を受賞された、田中千智さんの「未知の森」です。
眺めていると、森に迷い込んだ女性が、モザイク仕立てのような古い館の中で、
物思いにふける少年に出会うといったような、ストーリーまで浮かんできそうです。)
観覧者投票による、「オーディエンス賞」も選ばれるのだそうです。そういうの、ちょっとワクワクしませんか?
<人気投票>は、手に入れたい! という欲求と馴染むのでしょうか。
としたら画商さんにはとても興味深いに違いない。
第1回 「損保ジャパン美術賞」展 2013は、損保ジャパン東郷青児美術館で3/31(日)まで開催中。
オリガさんの作品は、本六に常設しています。こちらにもどうぞ見にいらしてください。
近藤オリガさんのHP http://ycondo.jimdo.com/