新年おめでとうございます! 《ホットケーキ25個目》

2011年1月2日

 
旧年中のご愛顧、ありがとうございます。 2011年もなにとぞよろしくお願いします。 

 昨年末、金沢に行きました。
円形で平屋の金沢21世紀美術館から外へ出たら、雨も止んでいて空気が美味しくてほっとしました。
なぜでしょうか。濃密なアート、もしくは虚構の世界から脱け出して、現実へ戻った開放感かもしれません。 
スイスのアーティスト「ペーター・フィッシュリ/ダヴィッド・ヴァイス」展は普遍的で上質な展覧会でした。
生きることの本質(みたいなもの)に到達しようとする強度な「運動」のようです。ふだんはガチに突き詰めない思考へと誘われました。年末の慌ただしい日程でしたが、無理してでも出かけてよかったです。
 「フィッシュリ/ダヴィッド」展のことを反芻していたら、20年くらい前のことを思い出しました。
当時、帽子のデザインを学んでいた友達に、「帽子ってわざわざかぶるみたいで、云々」とか言っていたら、彼女は「帽子って、わざわざかぶるものなのよ」と応えました。「フィッシュリ/ヴァイス」展はまさに、わざわざの、芸術なの
でした。 
偶然と必然の境目を、絶え間なく極めていくような映像作品「事の次第」は、観るものを逸らせません。「パラッツォ・リッタでのカナルヴィデオ」もきりのない永久運動です。観ていて飽きないのは、こちらの体も同じく、一瞬も休まずに、生きているから。
さまざまなメディアを駆使した作品群…ヴァリエテの中では一番素朴に見える粘土作品が、つい笑ってしまい面白かった。「10 SMILE」(「よりよく働くために」)です。
作品のなにもかもが、モノのエネルギーと、技術と時間を必要とする、正に体を張っての現代美術の粋でした。
そして、「質問」と題された、壁に次々に映し出されていく言葉たちは、気持ちの良い哲学への〈門〉のようでした。飛躍しますが、なぜかミヒャエル・エンデの「はてしない物語」に登場する〈幼こころの君〉のことを思い出したりしました。これについてはもっと考えていってみたいです。 
さてそんな濃密な仕事の結果から解放されて外へ出た私は、ホテルで手に入れた地図を観ながら、ひがし茶屋街方面へと歩いていき、偶然にも「泉鏡花記念館」の前に出て入館。
鏡花大好き♡人として、うふふの時間を過ごし、その後、ギャラリーのお客さまから教えられた古本カフェ「あうん堂」を目指したのですが、残念ながらお休み。
茶屋街の散策も飛行機の時間が迫り、断念しました。
東京へ帰った二、三日後に、金沢に雪が降りました。  
ギャラリーオープンの年2006年、青森美術館から始まって、関東はもちろん、直島、京都、岡山、函館、と続いてきた日本各地の〈美術展の追っかけ旅〉。今年も続けていきます。
もう少し暖かくなったら、鹿児島の「霧島アートの森」あたりを訪ねてみたいと思っています。
 「ヴァリエテ本六」、今年は、偶然と必然の波に乗りながら続けていきます。なにとぞよろしくお願いします。 
「フィッシュリ/ヴァイス展」の図録。ポストカード
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