道すがら、葡萄がフェンスにからんで実っているのを発見しました。
農園と園芸店の広い土地をかこっている背の高いフェンスに、
弦がまとわりつき、実った青い葡萄の房が、いくつも下がっているのでした。
手を伸ばしてとって食べたい気持ちはやまやまでしたが、
やめました。葡萄園の葡萄しか知らない私には、その葡萄たち、
あまりに荒々しかったからです。
鉄製のフェンスに横這いしていって、実らせる強いパワー。
おそらくこの屋敷の住人の方がこのようにまとわらせたのでしょう。
黄色から紫までのきれいな丸い粒のバリエーションですが、
よく見ると、野趣あふれる、はぐれモノっぽい風貌なのでした。
先日、BSのチェルノブイリのドキュメンタリーを観ていたら、
植物に関する放射線の影響を調査研究するために、
その土地に住み込んでいる科学者が、チェリーの実をとって、美味しそうに食べていました。
種さえ食べなければ安全なのだというのです。すでに検査済なのです。
チェルノブイリから人間も生物もいなくなり、時を経て、多くの生物が移り住んで暮らしています。
繁殖力が強く、多くの種が生きているネズミを調査したら、放射線からの影響があまりないそうです。
損傷したDNAをもとに直すシステムも正常に機能しているらしい。
一方、空を飛ぶ鳥たちには、何らかの影響があるのだそうです。
とくにツバメ。羽の色の脱色とか、尾羽の長さが異なってしまったりとか。
こんな例は世界のどこにもほかにないそうです。
ツバメは渡り鳥だから、一定の期間、コロニーとしてそこで過ごすのですが、
毎年、やってくる新しいツバメが、影響を受けてしまうわけです。
人間がずっとほったらかしにしていたおかげて、
汚染された土地に、さまざまな生物が移り住んできて、新たな食物連鎖が機能していきます。
現在、チェルノブイリの無人の地の生物多様性は、どんどん豊かに?変容していっているそうなのです。
今後、放射線の影響がどのようになっていくのか、調査は永くにわたって続いていくのでしょうが、
皮肉な感じもします。
ところであの葡萄、今日また観に行ったら、
もうかなり食べられてしまっており、たったの一日でなんだか痩せていました。
食物連鎖です。命を野鳥に与え、はぐくんでいるのでしょう。
雑草除けのシートの上におかれた土嚢の、
土の中からもずんずん生えてきている夏草。
葡萄の近くの緑地では、
つる草が樹木にそって、どこまでも伸び続けています。
寿命もとてつもなく長いし、植物って、すごいなあ。