陶芸家 山本淳平さんの個展に行ってきました。
タイトルは「WONDERFUL WORLD」。
山本さんは第14回新生堂うわむき賞を受賞されました。
新生堂地下の広いスペースの壁面に、
たくさんのレリーフ作品、立体作品が展示されていました。
タイトルの「WONDERFUL WORLD」と 、
手放しでなかなか言えなくなってきた現在ですが、ここには確かにありました。
夜の風景の作品が多いのですが、゛土の温かみ゛の中には、
金属のメダルなどがあちこちに埋め込まれ、散りばめられています。
それは川や星空を表した、ガラスの鮮やかな青とは対照的で鈍い光を放っています。
どこかにある場所、その土地で、
人や動物たちはまどろんでいたり、佇んでいたり、
空を見上げていたり、膝を組んで静かに座っていたりしています。
かれらの存在はとてもとても小さいのですが、
それぞれが作家に愛されていることが、伝わってきます。
主張はしないのに、とても満ち足りた表情です。
見ているといつしか、私までその異国に迷い込んでいってしまうようです。
そこがとっても、WONDERFUL ! なのでした。
同じタイトルの名曲を、ルイ・アームストロングが歌っています。
゛素晴らしい世界゛に感動し、それに気づかない人の哀しみも歌っているような気がします。
「ニュー シネマ パラダイス」というイタリアの映画がありますが、
この曲を聴くと、あの映画の最後に流れるシーンを連想してしまうのです。
すてきなラブシーンは、すべて過去の映画のつなぎ合わせでした。
なぜ感動して涙が流れてしまうのか。
この「パラダイス」も、「WONDERFULL WORLD」 なのでしょうか。
悲しみ、独特なこと、または奇想、つらい現実やトレンドを映したりするのは、
人の興味を惹きやすく、面白いものです。
しかし、ここに展示されていた、すべてが微笑みに包まれている、WONDERFULL WORLD こそ、
胸にいつも置いておきたい「パラダイス」だ、と思ったものでした。
メダルの輝きは、誰も気づかないひっそりとした喜びのように見えてきました。
パラダイスの王者、気品に満ちたライオンのレリーフに手を振って、
にこにこと、笑い顔で帰ってきた個展でした。
山本淳平展 ~4/26(木)まで。 新生堂 (南青山5丁目) 03-3498-8383 http://shinseido.com/
山本淳平~空想旅行記~ http://kuusou8.exblog.jp/